Blog 年齢的にインプラントが追加でできない方によく噛める入れ歯を作成した事例
定期検診でむし歯が見つかり入れ歯治療へ
70代女性
メインテナンス時に右下のブリッジにむし歯が見つかりました。私が長く担当させていただいていた患者様で反対側にはインプラント治療なども行っていました。
今回インプラントとは反対側の奥歯にむし歯ができてしまい、ブリッジを外して確認してみたところ、残っている歯の状態が非常に悪く、残念ながら残すことができない状態でした。
定期的に検診でチェックしていても、年齢とともに①唾液量の減少や、②セルフケア能力の低下、③過去の治療の質、などにより、どうしても虫歯ができてしまうこともあります。それに対しては、①定期検診の頻度を上げる、②まめに水分を摂る、③汚れの除去能力の高い清掃器具を使う、④治療のやり直し、など状況に応じて対応させてもらうことになります。
患者様に事実をお伝えし、治療としては奥歯3本がない状態になるので、インプラントでの対応か、もしくは入れ歯での対応になるとお話したところ、「反対側はインプラント治療をしてよく噛めるようになったが年齢も上がり体力的にも再度のインプラント治療はしんどいかな…」とのことでした。
そこで、「入れ歯だけれども反対側のインプラントに負けないくらいよく噛めて、残っている歯がダメにならないような設計での入れ歯治療」をご提案し、ご納得いただいたため、その方針で治療を行っていくこととしました。
一般的に歯の寿命はどのくらいなのか
歯の寿命は過去に受けた「治療の質」や「治療回数」「噛む力の負担」に影響を受けます。歯は4、5回治療すると抜歯になると言われています。
①最初は小さいむし歯を詰める治療から始まって
②数年後にまた虫歯と言われて少しサイズの大きな金属の詰め物に変わります。
③次は詰め物の下に虫歯ができ、むし歯を取っていくと神経が出てきたため「神経を取りますね」と言われ神経がなくなります。神経がなくなった歯は銀歯などの被せ物が入ります。
④銀歯は汚れがつきやすいため、銀歯の縁のあたりからまたむし歯になりなり、外してむし歯治療をやり直した後、条件の悪い中、再度銀歯が入ります。
⑤次にむし歯になると健康なご自身の歯はかなり少ない状態で、残すことはできないため抜歯ですと言われます。
歯は時間をかけて丁寧に治療しないと、この悪循環に入り込んでしまい歯を失うことになってしまいます。
まずむし歯を作らないように、むし歯にならないための知識や歯の管理方法を知ることがとても大切です。そしてもし治療が必要になってしまった場合はできるだけまた悪くなりにくい治療を受けていただくのが良いでしょう。
インプラントに負けない「入れ歯」を作るための工夫
話を戻します。
今回、治療するにあたって工夫した点があります。
今回の治療では右下のブリッジの他にも問題のあった前歯を含む5本の被せ物をやりかえています。そのうち右下の3番目と4番目の歯は入れ歯用の被せ物として作成しています。
これら入れ歯用の被せ物は「サベイドクラウン」と呼ばれる物で、部分入れ歯を作成するにあたってはこれがあるかないかで安定の面、機能面で大きな差がでます。このサベイドクラウンがあるおかげで入れ歯をセットしたときにしっかり固定され安定し機能するわけです。
また、左下の3番目の歯と4番目の被せ物の歯にも少し凹みを付与して入れ歯の留め具がはまり込む形になっています。
左側のインプラントの上部に入っているのは手前におまけの歯がついたカンチレバーブリッジというの延長ブリッジですが、そのおまけの歯の部分をカットし、そこに入れ歯の歯を入れることにより維持がかなり向上しています。
手前の歯とインプラントの歯の向き合う面が平行になるように調整しており、そこに入れ歯が入り込みます。「入れ歯」と「歯」が面で接触するため、揺さぶられることが格段に少なくなります。
インプラントは強固に骨と結合しているため、入れ歯の支えとしても全く問題ありません。
治療前後の状態
小さい入れ歯は違和感は少なくなりますがデメリットも
今回作成したのは右下の奥歯3本を補うための入れ歯です。わざわざ左側のブリッジのダミーの歯をカットしてまで左側にも入れ歯の構造を広げています。右側だけの歯に留め金をかけるような設計や、左側に伸ばすにしてももう少し留め金の数を少なくした設計でも作れないことはないです。そのような設計の場合サイズが小さい分、違和感は少なくなりますが、安定は悪くなります。サイズは大きくはなりますが、多くの歯に維持を求めている構造の入れ歯は安定感が向上し、残っている歯を守ることにもなります。
治療を終えて
患者様が治療後のメインテナンスに来られていた際にお話をうかがうと「入れ歯にしたけれどしっかりと噛めます。治療していただきありがとうございました。」と言っていただけました。今後もセルフケアとメインテナンスで今の状態が長く続くことを願っています。
詳細
年代・性別 | 70代・女性 |
治療期間 | 約1年 |
治療費用 | 約100万 |
リスク・副作用 | むし歯の再発のリスクはあるため清掃指導と定期検診でチェックが必要 |
監修者情報
歯科医師(院長) 中田 佑
2011年 愛知学院大学歯学部卒業
2023年 TASK歯科・矯正歯科開業
人生100年時代において、生涯に渡りしっかりと自分の歯で噛んで食事をしていただけるように、適切なアドバイスやサポートをさせていただいています。研鑽を積み、培ってきた知識と治療技術を活かし皆様に貢献していきたいと思っております。
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