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受け口をそのままにしておくとどうなるのか?症例を交えて解説していきたいと思います。

受け口の状態を放置する問題点

①審美面での問題 
口元は見た目の印象を大きく左右します。歯並びが良いと清潔感があったり健康的に見えます。口を開けたときに前歯が逆になっていると相手に与える印象に影響があるでしょう。

②機能的にも奥歯に負担がかかりやすい
永久歯が生えそろった後で受け口の状態であると奥歯に問題が出てきます。前歯、特に3番目の犬歯は歯ぎしりをしたときに奥歯を守る働きがあります。受け口のままだと奥歯にトラブルを起こしやすく、またトラブルが出たときの対応もとても難しくなります。

次に受け口で生じる機能的な問題について症例を交えて解説していきます。

受け口の方は8020達成が0パーセント

噛み合わせが正常な場合、80歳で20本歯が残っている8020達成者は8割以上ですが、反対咬合(受け口)や開咬(前歯が噛んでいない)状態の方はなんと0パーセントです。こういったデータを見ると、歯の健康を保ためには『歯並び』がいかに大切かということがよくわかります。

なぜ歯並びが悪いと歯が長く残らないのか

歯は1本1本役割があります。特に重要な役割をする歯もありそれは3番目の『犬歯』や6番目の『第一大臼歯』です。犬歯は歯ぎしりをしたときに奥歯を揺さぶりの力から守る働きがあり、『犬歯』のポジションが良くないとこの役割を果たせません。また『第一大臼歯』は噛み合わせを支え安定させる役割があります。奥歯の支えがないと前歯は細くて弱いのでダメになりますし、逆に前歯のポジションが悪くても奥歯はトラブル続きになります。寝ている間に無意識のうちにやってしまう歯ぎしりは100キロ以上、体格の良い方であれば400キロもの力がかかると言われています。また、より後ろの歯ほど強い力で揺さぶられることになります。『犬歯』は歯の中で1番根が長く前方部に位置しているため歯ぎしりの際に力をかけても問題が出にくい歯です。ですからできるだけ前方部の歯で歯ぎしりの力を請け負い、奥歯が離れるような噛み合わせが理想です。

反対咬合の70代女性のケース

70代の女性で前歯がグラグラすると言われて来院された患者さんです。受け口を被せ物の向きで改善しており入れ歯は入ってますがしっかりとした奥歯の支えががありません。また歯の向きだけ変えた被せ物は下の歯の突き上げによって常に外れる力がかかるため長く持ちません。

グラグラの前歯を外すと中の歯はむし歯でひどい状態になっていました。この方は上下とも前歯は費用をかけて保険外診療の被せ物を入れられていましたが2、3年でこの状態です。これは以前の担当医師の診断・治療計画が良くなかったのではないかと思います。この場合下の前歯は残っていますがポジションが悪いため抜歯をして入れ歯にした方が治療後長く健康な状態を保てるのではないかと思います。私は基本的にできるだけ歯を残すことに力を入れておりますが、こういった場合、上は残っている歯を支えにした部分入れ歯、下は総入れ歯の形にした方が安定した治療結果になりそうです。もう少し早く担当させてもらえればと思いましたがこればかりは仕方ありません。この方も残念ながら8020は達成できていません。

反対咬合の40代女性のケース

 奥歯が痛いとのことで来院された前歯の噛み合わせが逆になっている40代の女性。痛みの原因はむし歯ではなく噛みしめによるものでした。奥歯に治療の跡が多いのは単に歯磨き不足が原因というわけではありません。歯ぎしりのときにガイド役となるはずの犬歯のポジションが悪いためその役割を果たせず、奥歯がダイレクトに強い力で揺さぶられています。奥歯はかなり負担がかかっているため詰め物や被せ物は日々外れる力がかかります。外れる前から詰め物と歯の間のセメントが壊れ、その隙間からむし歯箘が歯の中に入ってきます。数年ごとにむし歯の治療をしているとあっという間に自分の歯が少なくなり歯を失うことになってしまいます。

今のままの噛み合わせでは時間の問題で奥歯が失われていくことになるため、矯正にて反対咬合の改善を行ってから奥歯の詰め物や被せ物のやりかえを行う予定です。

反対咬合の50代女性のケース

右下の歯茎が腫れて来院された50代女性。腫れた原因はむし歯菌が歯の中に入り込んだことで根の先に膿が溜まっていたからでした。この歯がむし歯になった原因は、以前行われていた治療の質にもありますが、それよりも反対咬合の噛み合わせが大きな問題としてありました。前歯が奥歯を守る働きをしていないため、夜間に歯ぎしりをすると奥歯がかなり揺さぶられている状態でした。奥歯には被せ物が入っていましたが、被せ物が揺さぶられると外れる力がかかります。少しずつ被せ物を付けていたセメントが壊れていき隙間がで始めると、そこからむし歯菌が中に入っていくわけです。ですから、虫歯の治療をしてまた被せ物をやり直したとしても、今の噛み合わせを改善しない限り、また悪くなってしまうわけです。

そこで根本的に問題を解決するために、まずはしっかりとむし歯治療をしてから矯正治療を行い、歯並びを整え奥歯に負担がかからない噛み合わせを確立しました。その上で最終の被せ物治療を行いました。下は矯正後に被せ物をセットしたときの写真です。CTレントゲンを見ても病気がしっかり治っているのがよくわかります。

治療後は患者様から、「こんなによく噛めるとは思わなかった。驚きました!」と言っていただけました。被せ物も見た目がきれいなのは当たり前ですが、それだけでなくしっかり噛めるように機能的に作っているのと、歯ぎしりの時に負担がかからないような形になるように工夫しています。さらにお手入れがしやすいような配慮もしています。一度治療したところが長く健康維持できることを第一に考えて治療を行なっています。

まとめ

このように反対咬合などの噛み合わせの方が治療が必要になった場合、歯並びの改善をしてから被せ物をやり直す方が治療後に長く健康な状態を保てます。反対咬合の方が8020達成者0パーセントというのも納得していただけたでしょうか。私は補綴(ほてつ)治療(セラミックなどの被せ物の治療やインプラントや入れ歯を併用した治療)を専門性高くやっておりますが、やはり長く持たせる秘訣は奥歯に負担のかからない歯並びにあります。だからこそむし歯になる前に被せになる前に大人になる前に治療がたくさんされていないうちにお子様のうちに歯並びを改善しておくことの大切さを感じています。

監修者情報

歯科医師(院長) 中田 佑

2011年 愛知学院大学歯学部卒業
2023年 TASK歯科・矯正歯科開業
人生100年時代において、生涯に渡りしっかりと自分の歯で噛んで食事をしていただけるように、適切なアドバイスやサポートをさせていただいています。研鑽を積み、培ってきた知識と治療技術を活かし皆様に貢献していきたいと思っております。

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